拳を握って立つちくわぶの魂

恋はしめさば、海はマトカ。3時のおやつは生たまご。

映画『今夜、ロマンス劇場で』を観た話

今日配役発表があったので、母と次回の月組公演の原作映画を観てみようということになった。せっかくアマゾンプライムに入っているのだし。といいつつ、母はすぐに寝落ちた。この人は自分から何か観ようと言ってもすぐに寝る。しかも歯軋りがうるさい。

古い映画の主人公である姫に恋する助監督の男の元に、映画の世界から恋の相手のお姫様がやってくるという物語だ。物語の前半は、主人公が書いた脚本の内容を看護師に聞かせるという形式で、回想のように描かれる。

しかし、宝塚のポスターだけを見てあらすじはまったく読んでいなかったので姫はおしゃまでヒロインヒロインした女の子だと想像していたのだが、なんという横暴。「お転婆」の域を超えているぞ。警官は殴るし、勝手に撮影所をほっつき歩いては書き割りを塗り替え、主演俳優を気絶させる。ダイナマイトを放り投げてスモークの箱にシュートさせてしまう。この時点で母も眠りに落ちてしまったことだし、もう観るの止めようかなと思った。お姫様があまりにも無茶苦茶で主人公がとばっちりに遭うのが可哀想でストレスが溜まる。この女何をやらかすのかとヒヤヒヤするんだ。主人公がついに爆発した時はそりゃそうだと思ったよ。

しかし、お姫様も少しずつデレてくる。デレてきていたかな?横暴なお姫様と主人公が打ち解けていくと少しずつ面白くなってくる。お題を出してものの言葉を出すゲームをしたりと、映画の脚本作りのためにデートのようなものを重ねていくと、お互いに惹かれあってもくるんだ。ここまでくるとお姫様が少しずつ可愛らしく見えてくる。

そのうちに明かされる事実。お姫様は人間の温もりを感じると消えてしまうこと。なるほど、人に触るなと拒絶するのはそういう理由があったのか。そして、お姫様は主人公に合うために映画の世界を飛び出したこと。なんだなんだ、相思相愛だったのか。触れられなければずっと一緒にいられる。けれど、愛する人がそばにいるのに触れることができないという苦しみに耐えられるか?その問題に突き当たる。私の大好きな漫画『天は赤い河のほとり』のナキア皇妃とウルヒ・シャルマは15年以上誰よりも近くにいたのに最期の時まで触れることはなかった。その深い愛が(その愛のためにヒッタイト帝国は大迷惑を被ってはいるが)私は大好きなので、個人的には触れられなくてもずっと側にいてほしいですね。

お姫様に指輪を渡しても、悩む主人公。主人公の仕事場まで会いに行ったお姫様は仲間に相談しているのを見てしまい、やっぱり触れることもできない普通じゃない女はダメだと身を引こうとしてしまう。あの横暴なお姫様が男のために身を引こうとしている。自分だって男のことが好きなのに、普通に幸せになれる人間と結ばれた方が良いと。お姫様も恋を知って成長したな。

姫様が消えて落ち込む主人公に社長令嬢が近づく。しかし、主人公が好きなのはやっぱりお姫様。お嬢様もそのことは気がついた上で想いを告げた。お嬢様良い人だよ。幸せになってほしい。主人公が自分の気持ちに気がつけたなら、あとはお姫様の元に向かうだけだ。お姫様がいたのは、主人公がお姫様の映画をいつも観ていた映画館。2人が出会った場所だ。主人公とお姫様の関係に気がついていた映画館のおじいさんが気を利かせて貸し切り状態にしてくれた。別れる前にせめて抱きしめてほしいと言うお姫様。いじらしいな。この辺りからあまりのいじらしさに少しずつ涙が出てくる。そしてお姫様に近づいていく主人公。そして……と言うところで現在に戻ってくる。映画の企画は結局なくなってしまい、この脚本は完成することはなかったのだと言う。続きを聞かせてほしいと言う看護師だったが、そこにお孫さんがやってくる。

物語の冒頭に孫がいるが転んでも手を貸すこともないので所詮は遺産目当てだと言われていた。孫がいるなら結局はお姫様とはお別れで当て馬の社長令嬢と結婚するのだろうなと思っていたのだが、ここで足元から映るお孫さんの服装。お姫様が着ていそうなレトロで可愛らしい服だ。そして顔が映る。お姫様じゃないか!そうか、2人は触れられなくても側にいる道を選んだのか〜!!うわ〜!!ここら辺からずっと泣いていた。

映画から出てきたお姫様は歳をとることはないから、ただの人間の主人公とは見た目の年の差が開いていくのね。昔の漫画だが、『天使たちは闇夜に囁く』を思い出すな。あれは男が人外で女が人間だったが、あれも歳を重ねるごとに見た目の年齢差が開いていき、母だか祖母だかと言われるようになっていた。しかしここで人間×人外要素まで入れてくるのか。ひゃあ、萌えを確実に押さえてくるな。転んでも助けようともしない冷たい孫というのも、触れたら永遠に離れ離れになってしまうからだったのだ。助けたくても助けられないのももどかしいよなぁ。しかし鮮やかな伏線回収。そういうことだったのね〜触れられなくても共に生きることを決めた2人。結婚写真も離れた場所にと不思議な構図。映画会社が潰れて、映画館勤めになった主人公は年嵩を増しおじさんになり、お姫様は若いまま。しかし映画館にお弁当を届けにきたり、ドアのガラス越しにキスをしたりとラブラブ。ガラス越しのキスって良いよね……私は『少女革命ウテナ』の劇場版の冬芽先輩とウテナがとても好きだ。一度お弁当を渡して部屋を出た後にもう一度ドアをノックしてキスをねだるお姫様がかわいいなぁ。海辺の散歩も、手を繋げないからハンカチの先と先を持って歩き、その散歩もいつしか主人公は杖をつくようになり。この時間の経過がなんとも言えない。切ないが美しい。

映画会社は潰れ、映画館も閉館し、主人公ももう病院生活。もう長くはない最後の力で物語を完成させようとする。そして、アルバムをめくり過去を振り返るお姫様の元に電話が鳴る。走り出すお姫様。一枚のストールだけをかけ、雪の中を転んでも立ち上がり懸命にかけるお姫様。主人公はもう呼吸器に繋がれて、死ぬ直前と言ったところ。それでも最愛のお姫様がくると、呼吸器を外して、「いつものゲームをしよう」と言うんだ。ゲームというのはあの、お題から連想する言葉を並べるゲーム。しかし、主人公はそこから先の言葉が出てこない。

「お前はいつも遅い」と言って、自分から始めると言うお姫様が挙げたもの。それは主人公と過ごした日々の些細な記憶。青い空、虹の色。「お前の隣で見る景色はどれも美しかった」と。白黒映画のお姫様が、現実世界で色を知って、恋を知って、それから何十年の時が流れて。愛しい人と共に過ごした日々の幸せが、このシーンでひしひしと伝わってくる。

そして、最後に愛した人の温もりが知りたいと、主人公の手を取り、消えゆく鼓動を聞くように、胸に顔を乗せるお姫様。それに答えるかのように、最期の力でお姫様の腕に手を添える主人公。うわー!!ずっと愛しあっていた2人が最期の最期に……っていうのに弱いんだ私は。死んでしまったら温もりは消えてしまうから。死んでしまえば手を伸ばすこともできないから。2人ともずっとやりたかったことだよね。本当にもう……よかったよかった。

そして主人公は生き絶え、お姫様も光となって消えた。後に残るは脚本ばかり。

舞踏会に現れた主人公は、お姫様に薔薇を差し出す。白黒の世界で、ただ一つ赤い薔薇を。すると世界は一変。白黒の世界が鮮やかに色づいていく。そして2人はいつまでも……

なんとなく、せっかくだから見てみるかと軽い気持ちで見始めた今作。最初の方で投げ出しそうになったが、中盤から涙が止まらなかった。鼻が詰まったのでエンドロールで鼻かんだ。こんなに泣ける作品だとは思わなかった……なお私は『神々の土地』の最後の「神々の土地〜土よ」の4分間だけ観てボロ泣きする人間。

さて、宝塚での上演が決まっているこの作品。大蛇丸って誰よ?三番手の役のはずなんだが、まるで出てこない。まさかあの微妙に一瞬だけ出てきた糸で動かされているアレを膨らませるのか?というか、ほとんど主役カップルの出番で、他の役はあまり出番ないよね。彩さんの役と鳳月さんの役はまだ微妙に出番があるが、お姫様の愉快な仲間たちと大蛇丸(仮)に比べればの話だ。それよりも映画館の館長の方が印象に残るな。名前がわからないが組長の役か?あとは、どれくらい現代パートに尺をとるのかはわからないが、天紫さんの看護師。元々の映画が宝塚の1幕芝居よりも長いし、どう宝塚向けにアレンジすることだろうか。

さて、演出は小柳先生。映画の舞台化というと『Shall we ダンス?』は面白かった。私は『シャングリラー水之城ー』とか『めぐり合いは再び』みたいなオリジナル作品が好きだが、最近は原作もの多めのイメージ。『アリスの恋人』をどこかで再演しないだろうか。ナイトメアは背が高くて白塗りの似合う人が良いです。そしてフル尺で音源を収録してください。うたプリでもこの曲いいなと思ったら藤田さん作曲のことが多い。好きなキャラクターにはソロは一度も来たことがないが。というか来年は星組でも『めぐり合い〜』の新作をやるから小柳先生はこの時点で2作大劇場が決まっているのか。

ロマンス劇場はもし見るにしても配信かなと思っていたのだが、映画を観たら観たくなってしまった。うーん、12月に結構観にいく予定があるし、シャルウィは好きなんだが、未だに私はシュバスくんのことを引きずっているので悩む。彼は原作では最後まで生きているし操られもしない、これからのヒッタイトを背負う真面目で良い子なのでどうぞよろしく。これからの宙組を背負う瑠風さんに相応しいと、演目発表の頃から思っていたキャラクターだ。

その後感動して泣いたら頭痛がしたので天河のVSミタンニ、ラムセスの歌、オロンテス河の戦いの場面と戴冠式、そしてシャングリラのOPとパレードだけ観た。偶然にもどちらも小柳先生の作品。目についたのを適当に流したので全く関係ない。黒太子はスチールが欲しかったし、イル=バーニとナキア皇妃はソロの写真が欲しかった。イルなんて人気キャラクターだし、システム的に仕方がないとはいえ出さないの勿体なさすぎるよね。

そしてやっぱりシャングリラは最高だ。私は氷派。雹と霙の双子も好き。でも空もすごく好き。基本的に長髪が好きだけれど、あのビジュアルは神っている。祐飛さんの役のビジュアルの中でも特に好きな5本の指に入る。この時代はBlu-rayはなかったので、今からで良いからBlu-rayにして欲しい。なんなら祐飛さん時代の作品全部Blu-rayにしてほしいのだが、『カサブランカ』と『誰がために鐘は鳴る』は版権切れているんだよな。また再演するときにでも……版権が切れているので愛月さんの初新公なのに退団特集で放送されない。うちにあるはずの新公を録画したDVDが見つからないので残念。でも祐飛さん時代のは母が本当にこまめになんでも残していたからあると思うのだが。

ロマンス劇場、原作は面白いし泣けるし、ポスターの画像はとても素敵だ。果たしてどんな作品になることか。